

「小泉八雲の妻、節子」
先日、松江の小泉八雲記念館を訪れた。
中学校の英語の教科書に、「A long time ago,」から始まる「むじな」があった。
英語嫌いだったのに、むじなの世界の静けさと不気味さは、怖いながらも気に係るものだったから忘れられない。
そのくせ怖いもの嫌いなので、小泉八雲の「骨董」や「怪談」などの本は読まないまま。
でもいつか、なぜイギリス人ラフカディオ・ハーンが小泉八雲になったのか、知りたいと思っていた。
松江城城郭の外にある記念館は、とても興味深いものだった。
展示されている多くの写真や情報から、
生きたラフカディオ・ハーン、小泉八雲が私の中に飛び込んできた。
そしてその中でも何より興味深かったのは「妻、節子」だった。
小泉節子「思ひ出の記」を買って一気に読んだ。
ヘルン(小泉八雲)の小説に大きな影響を及ぼし、支え、尽くしたセツの生き様が衝撃だった。
「パパさん」「ママさん」と呼び合うふたり。
パパさんはママさんを信頼し、二人で喜びに満ちた人生を(13年余り)送っていた事。
ヘルンは頑固気質で、嫌いとなると少しも我慢しなかった事。
西洋風を嫌い、和風の中で生きていた事。
他人との交際や電話を嫌い、騒がしいのを憎むほど嫌っていた事。
コトリとも音のしない静かな空間の家で、セツに聞き語りの話をさせ、小説を作り上げていった事。
子供のように喜び、悲しい時は世界中が悲しいという鋭い神経を持っていた事。
法螺貝を面白がり、煙草の火がなくなった時にコトリとも音のしない屋敷で吹く事。
淋しい場所を好み、セツや子供たちを愛し、自分の命の終わりを判りながら
54歳、夢の途中で狭心症で亡くなったヘルン、を愛したセツ。
奇しくも今年の秋のNHK朝ドラ「ばけばけ」でセツが主人公になるらしい。
どんな人生が描かれているのか、楽しみではある。
潰れてた左目を避け、写真はこの向き。