

「年を取る事と病気になること」
去年の暮、病気になった。
一昨年、乳癌になった時は、
「そっか、癌か。癌なら進行が分かるから、
再発するまでに事業承継して、
再発したら、やりたいことをやりつくして、
ぎりぎりまで家に居て、
最後は、緩和病棟(自分の子供たちは介護ができない)へ行こう。」
と、自分のこれからの道筋が見えて、それはそれで安心したものだった。
所が、昨年の暮れに新たな病気になった。
心臓に関する病気だった。
「やばい、怖わ」と思った。
いつ発作が起こるか分からない。
手際が悪いと心筋梗塞になって終わる。
半年以上なにもなかったのに、
先日、また発作が起こった。
自分の人生がいつ終わるか分からないという事は、
こんなに不安なのかと感じた。
今までは、自分のしたい事ができ、行きたい所へ行けるのが当たり前だった。
でも今は、どこでいつ何が起こるか分からない不安が、いつでもまとわりついてくる。
自分はお年寄りの介護を生業としている。
ご利用者は、健康年齢を超えており、いろいろな病気や障害を抱え人の介護を受けて生きている。
ご利用者は、「自分のやりたいことはもうないよ。今のままでいい」と言う。
自分は、分かったつもりで、「今を大切に生きましょう」と言ってた。
自分が持病を抱え、精神的にではあるが活動の幅が狭まってきて、
ご利用者の気持ちが、やっと分かった気がした。
病気や障害があると、どんどん生活の不自由さが増してくる。
自分の将来の不安と、できない事の多さに絶望的になっている、
死の恐怖は、口にはできない。
そんな利用者に自分は寄り添っていなかったな。
年を取るという事、病気を抱えて生きるという事。
やりたいことも出来ず、生きたい姿も遠い。
死の恐怖がまとわりつく。
そんな人たちの不安や絶望や諦めが、
やっと今、分かった。
ごめんね。
今まで気づかなくってごめん。
怖いけど、一緒にいる今は、
安心してね。ゆっくりしてね。
他愛のない今日を一緒に過ごそうね。
互いに怖さを背負った者同士、
普通に生きて行こうね。
言葉を交わして、ご飯を食べて、
お風呂に入って、うんこしっこも喜んび合って、
普通に生きて行こうね。