よっしいブログ
「若年性認知症のこと」
私が、自分で事業を始めて18年目になる。
事業をやろうと思ったきっかけは、若年性認知症の人と出逢ったからだ。
私が介護の世界に入ったころ、認知症になる原因の1位は脳血管疾患によるものだった。
「脳の中で血管が切れたり詰まったりし脳細胞が死滅するため脳の部位による障害が起こり、認知症が起こる」と習った(気がする)。
アルツハイマー型認知症の解明が進み、脳細胞が死ななくても進行する認知症が増えてるんだと驚いていた2002年ごろ、ピック病という病気専門のグループホームができたと新聞で見た。
自分は、始めて聞く「ピック病」という病気(性格変化・社会性の消失・悪気なく人を叩いたり反社会的行為・自己中心的行動・常同行動など)の人に会いたい、と思った。
2005年ごろ、ピック病の人と出逢った。若年性の人だった。
本人の若さと強烈な印象が、「この人が使えるデイサービスを作りたい」と思わせた。
で、起業し、それ以来、何人かの若年性認知症の人とほぼ途切れなく出逢ってきた。
若年性認知症の人をケアする機会を得るたびに、つくづく実感することがある。
「介護保険で若年性認知症の人をケアするのは難しい」という事。(本人にとっても、家族にとっても)
介護保険は65歳以上の高齢者の生活援助・機能訓練をするためにできた制度である(原則)。
介護保険は、利用者の定員やスタッフの人員・収入の上限が決まっている。
つまり、少ない人員で多くの高齢者をケアしなければ事業として成立しない。
デイであれば、高齢で援助が必要な理解力のある人を多く集め、少ない人員(スタッフ)で回さないといけない。
現状、デイに認知症の人が来ると、共同生活の輪が乱れて手がかかり、スタッフを増やさないといけないので、問い合わせ時に「人員が不足しているため」と断られることが多い。
認知症でも難しいのに、若い人となると行動力や趣向が高齢者とはかけ離れ、ケア方法は模索途中なので、グンと受入れのハードルが高くなる。
若年性認知症の人だけを集めた専門のデイを展開するには、ニーズの数が少ない。
介護保険のデイサービスで若年性認知症の人を受け入れるのは難しいし、デイだけでなくショートや施設でも、受け入れが難しい。
コロナ終わりごろから、若年性認知症の人の見学が増えている。
若年性認知症の人が、それぞれの人生を暮らすために利用する制度には3本柱がある。
3本柱は、「医療」「障害福祉」「介護保険」である。
「医療」で、若年性認知症であることの診断と進行を抑えてもらう方法を教えてもらい、
「障害福祉」で就労継続を支援してもらったり、障害年金・精神障害者保健福祉手帳の手配をしてもらい、
就労が難しくなってきたら「介護保険」で安全・安心な生活(在宅・施設・ショート)を支援してもらう。
これらの3本柱は連携していないと若年性認知症の人の変化についていけない。
3つの連携がシステム化していて、「若年性認知症の方はこの流れで」と示すべきだが、それが出来る市町村や広域連合はない状況である。ニーズが少ないから、必要性は理解できても展開できないのだろう。
本当に難しいんだな。
3つの連携がシステム化していたら、若年性認知症の人や家族は、進んでいく病状に合わせてソフトランディングしていける。
家族・本人は、自分たちの位置を知り、次に起こることを予測し、多くの人の力を借りて生活を継続できる。
それぞれの事業所も自分たちの使命が分かり、次にバトンタッチする時、連携できる。
私たちの所へ来られる若年性認知症の人の家族は、「本人らしく生きられる何かできる場所」を探しておられることが多い。
ご本人といえば、意思は曖昧で「本人らしく居られる場所」探しが必要な場合が多い。
「何か出来ることがなかったら可哀そう」と家族はおっしゃるが、本人は不安を軽減してくれることが一番である。
そんな家族と本人のニーズのずれも、3本柱の連携ができていれば緩やかに解消していけると思う。
介護保険で探して使えそうなのは2つ。「共生型デイサービス」と「グループホームのデイ」。
「共生型のデイサービス」は障害の人も高齢者もケアしてくれるので、若い認知症の人でも使えるかもしれない。
「グループホーム」のデイサービスは、小規模で認知症に特化しているので、安心できるかもしれない。グループホームの良い所は、空き次第だろうが泊りもしてもらえる可能性があり、そのまま入居に至る可能性もある。
「若年性認知症」、大事なことなのだが、介護現場の現状は、「もっと認知症の理解をしていかねば」という段階に留まっている。
介護保険事業所で普通に「認知症の人」が受け入れられないと、それから先には進まないのだ。
介護保険で仕事をしている皆さん。
そろそろ、「高齢者=認知症」の意識を持って行かないか。
認知症の理解を進め、ちょっとしたBPSDにうろたえず、
認知症の人の利用を進めていく努力をして行かないか。
でないと、若年性認知症の人は、永遠に行き場所が無いままではないか、と思う。