よっしいブログ
「感情労働なんや」
アメリカの社会学者、アーリー・ラッセル・ホックシールド。
彼女は2000年に感情社会学という新しい領域を切り開いた。
私たちが子供の頃は、仕事は主に肉体労働(ブルーカラー)と頭脳労働(ホワイトカラー)があると言われていた。
そこに感情労働が加わった訳だ。
ホックシールドは著書『管理される心感情が商品になるとき』で、
「仕事を労なく行っていると見せるために、自己と感情を調和することが求められる」
「自分の感情を誘発したり抑圧したりしながら、相手のなかに適切な精神状態を作り出すために、自分の外見を維持しなければならない」
「疲れや苛立ちをごまかすことも仕事のうち」などと書いている。
石川准・室伏亜希訳『管理される心 感情が商品になるとき』世界思想社、2000年4月20日、原著1983年
対人援助の仕事には、看護師・教師・介護士・保育士・苦情担当窓口を始め、多くの仕事がある。
これらの職場で働く人は、感情労働をしている。
感情労働とは、感情を意識的に操作することが求められ、自分の感情を押し殺してでも業務を遂行する仕事である。
介護の仕事で考えると、こなすべき業務(入浴介助・食事介助・排泄介助・口腔介助・移動介助・全ての介助の準備と片付け)が一日続いている。
対象は物ではなく人なので、それぞれの場面で介助される人たちから意見・感想・要求・終わりのない話などを聴くことになる。
その時感じる負の感情【焦り・苛立ち・不快・不安・不満・負担感など】を意識的に操作し、押し殺して業務を遂行する。
負の感情を抑えるってしんどい仕事やなあ。
ストレスが溜まるし、疲弊するし、
人が相手なので命を預かる大きな責任があるし。
私は、自分の仕事が感情労働だと言われたとき、
とてもスッキリしたのを覚えている。
自分だけが抱えていると思っていた苦悩や不満や自信喪失などの感情が、
対人援助職ならみんなが感じている当たり前のことだと分かったから。
負の感情を持つのは、自分が悪いと責める必要がないと分かったから。
私たちの仕事は、感情労働。
感情を操作して働く仲間がいっぱいいる。
怒りが沸いた時は、「そうだ、感情労働をしよう!」と俯瞰で眺め、
呪文のように「感情労働・感情労働…」と唱えてみようか。
疲れ果てないために。
吉村全永