よっしいブログ
「自立って何よ?」
3年前の介護保険改正で、通所介護界隈では論争が起きていた。
それは、入浴介助加算Ⅱを算定できるかどうか。
入浴介助加算(Ⅰ)は、入浴中の利用者の観察を含む介助を行う場合。
入浴介助加算(Ⅱ)は、利用者が居宅において、自身で又は家族若しくは居宅で入浴介助を行うことが想定される訪問介護員等の介助によって入浴ができるようになることを目的に介助を行う場合。居宅を訪問し評価し、個別の入浴計画を作成し、計画に基づき、個浴その他の利用者の居宅の状況に近い環境にて、入浴介助を行うとⅡが算定できるということだ。
ところが、「居宅で入浴ができるようになることを目的」と書いたものだから、ケアマネ・役所から大反発を受けた通所介護が、厚労省に聞きまくった。
そこで、厚労省からQ&Aで、「自宅に浴室が無い場合、心身機能の大幅な改善が必要となる利用者」については、「通所介護等での入浴の自立を図ることを目的として」算定してもよいと回答が出た。
すると次は、ケアマネ・役所から「この人は入浴の自立を図ることが難しいので、算定できない」と言ってきた。
はあ~である。
ここで問題なのは「自立」の捉え方だ。
介護保険法は、法律冒頭の「目的」で、
【加齢に伴う心身の変化により介護を必要とする高齢者等が、その有する能力に応じて自立した日常生活を営めるよう、必要な介護サービス等を給付すること】と書いてあるではないか。
全ての高齢者の能力に応じた自立を謳っている。
今更、「この人は介護度5で寝たきりで自立なんか望めない」とか
「この人は認知症が深いので入浴の自立なんか分からないからだめ」とか言うのか。
介護保険の大前提を覆し、「自立できない人は介護保険が使えない」とでもいうのか。
「自立」とは、「他の援助を受けずに自分の力で身を立てること」という意味だが、
福祉分野では「自己決定に基づいて主体的な生活を営むこと」の意味として使う、と厚労省も2004年に述べている。
「自立」とは、自分の頭で考え自分の意志で行動する自己実現力のこと。
「自立」とは、自分の人生を自分で展開できること。
高齢になって、病気や障害で自分の思いを伝えられなくなっても、
私たち介護者が、本人の意思を代弁し、意思決定支援を行っていく。
だから、寝たきりや認知症の人でも自分らしく生きて「自立」できるのだ。
今年の4月に再び入浴介助加算Ⅱが改正の論点となったこともあり、再論議になっている。
特に、役所の介護給付適正化の指導でケアマネが役所の人に言われるらしい。
ええっ!
「自立が目指せない人は介護保険を使うなということか?」と聞き返せばいいのにと思う。
こんなことも分からないのかと思う。
私たちの仕事は、対人援助で、本人の人生を望む生活に近づくように支えているのだ。
入浴(もの言えぬ人)の自立の目標には、
身体面では、清潔保持・循環促進・新陳代謝の促進・疾病予防を
精神面では、リラックス・楽しみ・さっぱり感・精神面の切替・痛みの軽減を
社会面では、身だしなみを整える・防臭・生活のリズム作り・認知症の社会性保持を
その人の性格・略歴・言動から推測し、立てていく。
話せなくても、生きているんだよ。
話せなくても、日本人として脈々と続けてきた入浴をしたいと思っているんだよ。
話せなくても、湯船の中や湯上りの顔は、幸せそうなんだよ。
「自立」とは、助けてもらって生きることでもある。
高齢者が自立を目指して生き続けていることを忘れたくない。