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「春雷」
昨日は、夕方から曇天だった。
6時ごろから激しく雨が降り始めた。
そして30分が過ぎた頃、雷が鳴った。
春の雷。桜が散った後でよかった。
春雷を聞くと思い出す漢詩がある。
于武陵(う ぶりょう)の五言絶句「勧酒」だ。
勧 君 金 屈 卮 君に勧む金屈卮
満 酌 不 須 辞 満酌辞するをもちいず
花 発 多 風 雨 花ひらけば風雨おおし
人 生 足 別 離 人生別離たる
井伏鱒二が訳した詩がつとに有名である。(昭和12年(1937)5月、野田書房「厄除け詩集」より)
コノサカヅキヲ受ケテクレ
ドウゾナミナミツガシテオクレ
ハナニアラシノタトヘモアルゾ
サヨナラダケガ人生ダ
始めてこの詩を読んだとき、
強い衝撃を受けたのを覚えている。
若かった自分には、友と別れていく彼の心底を想像しきれなかった。
しかし今、多くの人々をおくる仕事につき、
身近な人との別離を経て、
桜が散ったあとの雷を聴きながら、
しみじみと口ずさめる気分になっている。
そう言えば寺山修司が、著書「ポケットに名言を」の中で、
「さよならだけが人生ならば また来る春は何だろう」
寺山修司の風景~さよならだけが人生だ/ベストエッセイセレクション/第 3 集 時代の風景
とアンチテーゼをあげていたな。
于武陵、井伏鱒二、寺山修司の3人ループを
毎年自分はしているなあと、我ながら単純な頭が可笑しかった。
雨音に、別れと幸せは、表裏だと感じた夜だった。